今回は、突然ですがケミストリという言葉について考えてみます。
これを読んでいただいた方は、ケミストリという言葉を聞いて一番最初に何を思い浮かべるでしょうか。
先日、書籍紹介した
「いいじゃん J-POP」の中に、
化学変化っていう言葉が頻繁に出てきます。おそらくこれは、chemistryの訳語だと思います。 なかなか使いどころの難しい言葉です。
実は私、ケミストリっていう単語は、この年になって初めて知りました orz。 きっかけは、佐藤優氏と竹村健一氏の対談本「国家と人生」という本ですが、読んで愕然としました。
「国家と人生」 p104
竹村:
そのテーブルで、世界中からやってきた学識経験者と対談できるのが、なにより楽しいと息子が語っていました。歴史学者もいれば、生物学者もいる。息子が「江戸の経済」というテーマで研究しているというと、各国の学識経験者が興味を持って、いろいろと聞いてくるらしい。日本の江戸とはどんな時代かを話すと、身を乗り出してくるそうです。
佐藤:
そこでケミストリーが生まれるわけですね。
竹村:
そうです。その「ケミストリー」という言葉も、日本人でなかなか「化学変化」と訳せる人はすくないんですね。英和辞典には第一番目に「化学」と書いてあるので、日本人はそこで止まってしまうんです。だからケミストリーといっただけでは、ほとんどの人がッピンとこないでしょう。あえていうと「触発」ですかね。
佐藤:
「触発」というのは実にいい訳語だと思います。・・・・・(後略)
ケミストリにそういう意味があったとは・・・。 触発は確かにいい訳語です。ただこの対談の中の話では触発でOKですが、先の「いいじゃん J-POP」に出てくるには触発ではものたりない。 触発という言葉は、触発されるところで終わって、そのあとに成果物が出てこない。まあ「触発されて作った」、「触発されてやってみた」などと後ろにかならず何をしたという動詞がくるので、触発だけでも問題はないとは思いますが。
「融合」という言葉も少し考えましたが、やはり違う。融合というと何かAとBを混ぜただけ。水と砂糖を混ぜて砂糖水ができました って雰囲気があります。 砂糖水は水の液体の特性も砂糖の甘さも持ち合わせています。
「ケミストリ」の場合は、水素と酸素を反応させると水ができるといった感覚です。元の原料である水素や酸素の特性とは全然関係ない水というものが、化学反応によって生まれる。これは確実に融合とは違う。 まあ H2 + O2 -> H2Oは明らかにchemical reaction なので、「触発」という訳語は適応できないですが、少なくともこの例えが自分には一番腑に落ちる。
あと、ケミストリには「相性」という意味があることも最近知った。
「さらば財務省」 p212
2006年9月の総裁選が始まるかなり前に、竹中さんは、次期政権担当者の最有力とみられていた安倍さんに、次のように提案されている。
「人間関係には、「ケミストリー(相性)」がある。小泉総理と私にもそれがあった。経済を中心に、これはという人物の話を聞いていただき、そのなかで安倍官房長官とケミストリーの合う人材を探していただく。そういう勉強会を一度、やりませんか」
こっちのケミストリはあまりしっくりこない。まあ私がしっくりこないからといって、どうなるものでもないですけどね。
とまあ、元化学専攻の駄文です。
関連記事