半年間で読んだ本を上げるという連載の2回目、前回は「サイエンス、IT関連」でしたが、このエントリーは歴史をテーマにします。
歴史:日本
転進瀬島龍三の「遺言」新井 喜美夫
今年鬼籍に入られた元陸軍参謀の瀬島龍三氏ですが、瀬島氏の近くに数年いた著者の回顧録。生前、戦中のことはほとんど語らなかった、語っても当たり障りの無いことしか話さなかった瀬島氏ですが、著者の長年の付き合いの中で希に出してしまう言動や行動から戦中の陸軍中枢の状況をあぶり出そうとした本。
それだけでも価値はありますけど、著者自身が第二次大戦時代を元にした著作も複数書いていることもあり、著者の持論やその他知識がそこかしこに出てる方がより印象が深く、またその一般常識とは異なる幾つかの見解に考えさせられるものが多かった。
例を挙げると、一番最初から東条英機はミッドウエイ海戦での連合艦隊機動部隊の壊滅をサイパン玉砕まで知らなかったとか、伊藤忠が青山に本社を構える理由とか、東条英機は実は昭和天皇の身代わりになるためにわざと無様な自殺未遂を(死なない程度に)したのではないかと。
それはさておき、この本の中の瀬島龍三氏の性格を見るとかなり奇異な印象です。私なんかでは確実に黙殺されるだろうな。(70点)
坂井三郎と零戦 (PHP新書 536)三野 正洋
まあ、タイトルの通りのノスタルジックな雰囲気を味わえる本。新書だし気軽に読めるから買った感じです。まあ坂井三郎空戦記録は読んでる程度(大空のサムライはまだ未読)ですが、ゼロ戦マニアな著者のうんちくを拝聴する感じで読みましょう。(70点)
逆説の日本史 12 近世暁光編 (12) (小学館文庫 い 1-21)井沢 元彦
ハードカバーでは15巻まで出ていますが、私は文庫版を購入しつづけてているので。
やっと家康の時代まできました。相変わらず何度も何度も同じことを繰り返し述べる書き方は変わっていない。(70点)
仏教・神道・儒教集中講座 (徳間文庫 い 17-11)井沢 元彦
逆説の日本史の近くの本棚に合ったのでついでに買った本。あんまり仏教とか神道とか儒教のことよく分からないので、初心者でも読めるかと思って・・・(70点)
天皇家はなぜ続いたのか―「日本書紀」に隠された王権成立の謎 (ベスト新書)梅沢 恵美子
書影がないから、わざわざ撮影しましたよ。出張先での暇つぶしに買ったので内容は余り精査せずに買ったのですが、知ってることが多くて30分で読了。議論も微妙で証拠が証拠になってない一人よがりな考察が多かった印象だけが残ってます。でも参考に成った点や、知らなかった新しい考古学的事実も紹介されていたので一応紹介。(60点)
幇間は死なず―落語に学ぶ仕事術 (ソニー・マガジンズ新書 6)京須 偕充
まず幇間(たいこもち)が読めなかったので購入。どちらかというとビジネス書になるような気がするけど、古典落語や江戸の町人文化が伺えるので、こちらで紹介。(70点)
軍需物資から見た戦国合戦 (新書y 194)盛本 昌広
この本は実に惜しい。タイトルだけから見ると戦国時代の兵站を扱っているように見えるので、名著「補給戦」を彷彿とさせたので購入してみました。過去の文献を使って●●戦争に××を△△徴発したとか書いてあって良い線行ってるのですが、そこでお終い。本当はそれら数字を元にどれくらいの戦争遂行能力があるとか、色々考察することは出てくるのですが、著者は只の歴史家で数字を使った考察に成れてないからでしょう。
例を挙げると、p128からの「小牧・長久手の戦いではどのように竹木を確保したのか」を見てみると
同年(1584)十月二十七日、秀吉は伊勢山田(三重県伊勢市)の上部貞永に、「もかり(虎落)」用の竹二千束を山田で竹が生えているところに割り当て、伊勢の楠(三重県楠町)まで運ぶように命じ、竹一束は二十または三十本と指定している。虎落とは竹を筋違いに組み合わせ、縄で結ん柵のことで、竹と縄であれば作れる最も簡単なものである。(中略)。さらに秀吉は塀柱・柵柱になる木二千本を購入して寄越すように命じ入手できない場合は山田にある家一軒ごとに一本か二本を割り当て納入するようにも命じている。
ここまで書いてあれば、虎落用に伊勢山田から徴発した真竹でどれくらいの長さの柵ができるかとか考えれるのに・・・。当時、竹と言えば真竹と書いてある(孟宗竹はまだない)。ググると真竹は10-20mまで伸びるようなので平均15mと仮定し、これが2000本で高さ1.5m程度の格子状の柵を作ると、私の簡易な計算では山田から集めた真竹で約500mの虎落ができることになる。
(杭になる部分は高さ1.5mで土の中に入るのが50cm、横には2本の竹を通し、杭は50cm間隔で立てると仮定。すると幅1mの虎落を作るには6mの真竹が必要ってことになる、虎落の作り方とかもっと解るとより正確な値がでると思う)
これ以外に計算できそうな数字があがっている例が無いけど、こういうのを積み重ねればなかなか面白い研究になるんだけどなあ。もしかしたら、既にそういった研究は旧帝国陸軍当たりがやっててもいいけど、兵站無視の旧陸軍がそんな研究していたかどうかは知らない。
あと、この本では戦国時代の環境破壊にも少し触れています。この本ではないですが、第二次大戦後に大型台風被害が多かったのも、戦中に過度の山林伐採があったからとの指摘もありますし、戦争は環境にも資源にもマイナスです。(80点)
あと名著補給線。一般向けで歴史としての兵站を扱う本はこれ以外見たことない。(マニアじゃないから知らないだけだと思うけど)
歴史:海外
図説 満州帝国の戦跡 (ふくろうの本) (ふくろうの本)太平洋戦争研究会
普通の写真集です。表紙にもある旧関東軍司令部の和洋折衷の建物や、その他和漢折衷や擬洋風の建物も良いですね。大連なんかまだ昔の都市景観が残っていていいですね。日本ではこういった建物や景観はどんどん無くなってるので。(75点)
韓国現代史―大統領たちの栄光と蹉跌 (中公新書 1959)
木村 幹

大阪河内出身の著者が第二次大戦後からの韓国現代史について語った本。副題にあるのように歴代大統領の紀伝体で貫かれている。最初は違和感があったのですが、日本と異なり歴代大統領のパーソナリティが非常に強いので、読み進める内にこの方法は悪くないと思いました。もう少し朝鮮戦争の話が多かったら良かったのですが、この本の目的と新書というスタイルからはしょうがないか。
私が物心つく前の話がメインなので、リアルタイムで生きた人は必要ない本かもしれませんが、それにしても金大中の波乱に満ちた生涯は凄いですね。
「金大中(きんだいちゅう) 大統領になり キムデジュン」だったかな。なんて昔見た川柳を思い出した本。(80点)
右手に「論語」左手に「韓非子」―現代をバランスよく生き抜くための方法 (角川SSC新書 25)守屋 洋
これもビジネス書に分類するべきな気がしますが、一応ここで紹介。これも通勤の暇つぶしに買いました。著者が守屋氏なのでタイトルに関わらず内容の予想がついてしまうのですが、タイトルが面白かったのでつい買ってしまった。まあ、内容は予想どおり守屋氏のいつもの感じなので気軽に読める暇つぶし以外の何者でもない。(65点)
ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座 (徳間文庫)井沢 元彦
これも逆説日本史購入のついでに購入。ユダヤ・キリスト・イスラムのそれぞれの宗教指導者とのインタビューは素晴らしい。ユダヤ・イスラムの人は日本経験が長い人で、少し偏りがあるような気がしますが、それでも面白い。
とりあえず、どの宗教でもファンダメンタリズムが最悪ということはよく分かった。また最後のアメリカの有人からの手紙もなかなか良いですね。(85点)
ローマ人の物語 32 (32) (新潮文庫 し 12-82)塩野 七生
塩野七生の名著ローマ人の物語の文庫版がまた増えました。既にハードカバー本は全巻読了してるのですが、購入してるのは文庫版。今月32,33,34巻がでましたので購入。文庫版もあと数年で終盤ですね。(80点)
>次回に続く ・・・ (次は政治・経済編、10/16(木)夜公開目標)
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