東芝がHDDVDから撤退したようなので、少しゲーム理論で考えてみる。
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以前の記事で、東芝はすぐにでもHDDVDから撤退したほうがよいと書きましたが、ワーナー・ブラザーズの発表から約1か月程度たち、撤退発表したようですね。すでに東芝のHD DVD搭載モデルのホームページでは、在庫限りの画像が貼られてますので、準備をした上での発表ですね。また、発表も金曜の夜とマイナス発表の基本を守ってますね。
さて、SONYがCellを東芝に売却したあたりから、このストーリーは出来レースで、バーター取引をしただけじゃないかとか、何で東芝はもっと早く撤退しなかったのかとか、いろいろ憶測はあります。そのため、次世代DVD規格のソニーと東芝の規格戦争を、ゲーム理論的に考えたらどうなるかと思い、暇つぶしに考えてみた。ただし、所詮専門家でない一般人が、初心者書籍を2,3冊読んだ程度の戯言と思って生暖かく見てください。
「前提条件」
1: 自社が事業Aを継続、他社も事業Aを継続:0pt
2: 自社が事業Aを継続、他社が事業Aから撤退:+1pt
3: 自社が事業Aから撤退、他社が事業Aを継続:-1pt
4: BD事業撤退するとPS3が売れなくなり、Cell事業が縮小:-1pt
5: HDDVD事業撤退するとPS3が売れるようになり、Cell事業が拡大:+1pt
-カッコの中身:(東芝の利得、SONYの利得)
-SBc、TbCなど:取り得る戦略:T:東芝、S:SONY、大文字:継続、小文字:撤退
SONY | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
BD 継続 Cell 継続 SBC |
BD 継続 Cell 撤退 SBc |
BD 撤退 Cell 継続 SbC |
BD 撤退 Cell 撤退 Sbc |
max. min. |
||
東芝 | HD DVD 継続 Cell 継続 THC |
(0,0) 状態A |
(1,-1) 状態B |
(0,-2) 状態C |
(1,-2) 状態D |
(1,0) (0,-2) |
HD DVD 継続 Cell 撤退 THc |
(-1,1) 状態E |
(-1,-2) 状態F |
(0,-1) 状態G |
(0,-2) 状態H |
(0,1) (-1,-2) |
|
HD DVD撤退 Cell 継続 THc |
(0,2) 状態I |
(1,1) 状態J |
(-1,-2) 状態K |
(-1,-3) 状態L |
(1,2) (-1,-3) |
|
HD DVD撤退 Cell 撤退 Thc |
(-2,3) 状態M |
(-2,0) 状態N |
(-2,-1) 状態O |
(-2,-2) 状態P |
(-2,3) (-2,-2) |
|
max. min. |
(0,3) (-2,0) |
(1,1) (-2,-2) |
(0,-1) (-2,-2) |
(1,-2) (-2,-3) |
--- |
というわけで表を見ると東芝の場合、すべての状態の中で最大利得は1であり、それを行うには、戦略THCまたは、戦略THcを行えばよい。min.を最大にするには、戦略THCである必要がある。よって、戦略THCが東芝の最適解になります。
次にSONYですが、最大利得3を取るためにはSBCとなり、minが最大の0になるのもSBCなので、戦略SBCが最適となります。
よって、東芝もSONYも次世代DVDもCellも事業を継続するTHC,SBCとなる状態Aがナッシュ均衡となりました。
次に、SONYはCellで最大利得をあげようとしてましたが、PS3の販売がおもわしくなくなったため、SONYのはCell事業を売却しました。半導体事業は初期投資が大変ですからね。
SONYのCell撤退が決定していて、東芝が買ってCellから撤退しないと決めたので、該当の表の部分を削除し、作り直すと以下のようになります。
SONY | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
BD 継続 SBc |
BD 撤退 Sbc |
max. min. |
||||
東芝 | HD DVD 継続 THC |
(1,-1) 状態B |
(1,-2) 状態D |
(1,-1) (1,-2) |
||
HD DVD撤退 THc |
(1,1) 状態J |
(-1,-3) 状態L |
(1,1) (-1,-3) |
|||
max. min. |
(1,1) (1,-1) |
(1,-2) (-1,-3) |
--- |
SONYを見ると、BDから撤退という選択肢はありえなくなり、BD事業を死に物狂いでやるしかなくなります。逆に東芝を見てみましょう。HD DVD撤退とBD撤退が一度に起こる状態Lは2社の戦いだけ見るのであれば起こりえないので無視すれば、それ以外の東芝の状態は利得が全て1となり、結果的に東芝はHD DVDを継続してもしなくても利得は同じになってしまいました。
SONYは戦略SBcをとるしかないのはわかっているので、東芝としてはSONYの利得が最低になるTHCをとることになります。SONYに対する嫌がらせですねw。よって状態Bがナッシュ均衡になります。
HD DVDの趨勢が決まったので、東芝がこれ以上HD DVDに肩入れする必要はなくなってしまします。撤退は早ければ早いほうが良いです。状態Bを選択し、HD DVDを継続して赤字を垂れ流すよりも、HD DVDから早期に撤退して、PS3と付属のBDが普及するのを手助けしたほうが良いとの判断が働きます。
というわけで、以上の結果をみると、陰謀説とかバーター取引だとかじゃなくても東芝が最近までHD DVDを販売していた理由の一端が見えます。
もちろんこの解釈があってるかどうか何とも言えませんし、第一初期条件がこんな単純でよいのかといった疑問もありますが、ひとつの参考意見として、ちょっと違った視点がみれたかと思います。
「過去の記事」
ブルーレイの終わりの始まり
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| ―HDD, NAND, 次世代DVD | 17時00分 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑