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イプシロンロケットの今後の開発スケジュールについて書き起こしてみた


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一応、少し前にブログ主が撮った写真だよ。

 もうすぐの8月27日にイプシロンロケットの初号機が打ち上げられるわけですが、気も早くその先の開発予定とかどうなってるんだろうかとグーグル先生に聞いていたんだけど、なかなか出てこない。
 そんな中、森田プロマネが2013年2月22日に北海道大樹町で講演した動画がUstreamで公開されていた。

  「HASTIC創立10周年記念 特別講演会」国産宇宙技術の新たなる挑戦-イプシロン ロケットの開発


書き起こしでもやろうかなと思ったけど、ボリュームも多いのと最初の半分くらいまではイプシロンロケットの概要的な話で、今後の予定と願望が入り交じったおもしろそうな話が後半になっているため、後半部分をまとめてみた。




01-syogen.jpg
イプシロン初号機は、LEOに1.2トン。SSOに450kg。M-Vの時代はLEOに1.8トンあげていた。
コストは約半分。 打ち上げ能力は2/3までは下がっていない。
だから、イプシロンはM-Vの3割程度コストパフォーマンスが高い。
今年の夏、この形態のロケットが打ち上げられる

02-develop-schedule.jpg
初号機の打ち上げ成功が一番大事。
同じくらい大事なのが、このあとどうするか発展構想。
イプシロンは今までの惰性で開発してるわけでなく、戦略的に進めている。
事実、キーテクノロジー、開発の大変さに応じて2段階に分けている
第一段階のE-X形態(今年の夏に打ち上げる)のは、ロケットの知能化、モバイル管制といった超のつく新しい技術の実証を世界に先駆けて行うために試験機を打ち上げる。

JAXAは大きなところだけど、予算はそんなに多くなく、特に小さな固体ロケットに回して貰う予算は限られている
イプシロンの全体の開発予算を圧縮するために、その他の部分、超革新技術以外の部分は出来る限り既存の技術。
既存の技術とはいえ、M-Vのような立派な技術が前身。

一方、第二段階では、構造やアビオ系などを中心に抜本的にコストを下げる改革をして、値段をもっと下げて、低コスト版イプシロン、我々の言葉で通称「E-1ロケット」を2017年度に登場させられたらいいなと思い、研究を進めている。

低コスト化は、最新の部品を使うので小型、軽量、低コストの三拍子。
コストを下げようと努力すると、自然とロケットは軽くなる。つまり衛星打ち上げ能力は高くなる。
単に低コスト版イプシロンと呼ばずに、「高性能低コスト版イプシロン」と呼んでいいのではないか。


03-highperf-lowcost.jpg

JAXAだけではなく、産官学でロケットの低コスト化は幅広く行われて
全ては一つの壮大なコンセプトに集約。打ち上げシステムのさらなるシンプル化。 ポイントは3つ。製造設備、プロセスから始まり、打ち上げ射場の設備や運用、ロケット搭載物を含めて、ロケット打ち上げに必要な全てのものを小さく、軽く、安く、コンパクトにするというコンセプト
ロケットは乱暴な言い方でいうと、失敗したときの怒られ方が凄まじいので、新しいことに手を出してない。
これからではそんなことではいけないというのが私からの提案。
他の産業界に追いつけ追い越せでロケット業界を改革していきたい

例えばワイヤレス化は効果が大きい。ロケットは多段式なので1と2段目、2と3段目の間の電気製品どおしを結ぶ線がもの凄くたくさんあって、こんな太いのが2本も3本もある。それを繋げるのが大変な作業。
その段間をワイヤレスにすれば、段間を繋げる作業が簡単になる。
今はそれが1日作業だが、ワイヤレス化でワンタッチになる。

構造系でいうと、金属部品をボルトナットで止めているのをCFRPの一体成形にする。
ようはガンプラ(ガンダムのプラモデル)のようにプラモデルくらいにロケットの部品を少なくし、組み立て行程を簡素にし、リスクとコストを下げ、信頼性をあげる

時間の関係で余りはなせないが、低融点推進薬を作ろうとしている。
推進薬を作る設備を小型化、高頻度につかえるようにする製造プロセス改革。
イプシロンロケットは知能化によって、打ち上げ管制をモバイル管制にした
ただ、実はアンテナ系といって、ロケットを追跡するアンテナが必要。
これからはさらにロケットの知能を高めて、TVの中継車なみにアンテナをコンパクト化して集約化
将来の再使用型ロケット。ロケットの格段を回収システムを検討

04-e1-devel.jpg

高性能低コスト版のイプシロンは今どうなっているかというと、研究中なのであくまで検討例
2つだけご紹介
E-Xが今年夏に打ち上げるもの
一番右がM-V。イプシロンのお兄さん。
E-1のケース1、ケース2がポストイプシロン。

最低でもケース1をやる ケース2は欲張った案で、第一段ロケットを低コスト化開発がミソ。
大きな1段ロケットはH2Aで使っているSRB-Aで、年に10本くらい作っている。これでも日本のロケット業界では大量生産。
大量生産なので安く買える。
でもそれでもまだ高い。これをもっと低コストにしようと開発の計画を立てようとしている

このとき、ロケットモータを変更するだけでなく、燃料の量を66トンを70トンくらいに増やす。
推進力を今の25%増やして、ロケット全体の能力を大幅に増やそうとしている
ここまでできれば、M-Vに匹敵する能力がM-Vの1/3近くのコストでできる案。
将来の惑星探査も非常にスリムになる

05-moon-explore.jpg

これからのユーザの心意気を聞いてみると、惑星探査が避けて通れない
日本の固体ロケット技術は世界一といわれているけど、 何で世界一といわれているかというと簡単な指標があって、 世界で唯一前段固体で惑星探査をしたという、その総合力

事実ご存じのとおりM-Vははやぶさを打ち上げたわけですけど、 M-Vのさらにお兄さん、M-3SIIロケットは立派にハレー水星や月の探査をやっている
M-3SIiロケットはイプシロンより小さい。黙っててもイプシロンは惑星探査ができる。
その証拠をグラフにしてきた。
イプシロンでも4段のキックモータを使ったもの
E-X形態では、200kgくらいの探査機が上げられる
E-1 ケース1でも300kg。 ケース2ならM-V級。
ここまでいければイプシロンの発展系としてはベストなものができると考えている
こういった方向で頑張っていきたい

これはあくまで、打ち上げ能力の目標であって、色々な工夫でこれくらいの能力を確保しようという目標。
若干、私の希望的観測も含まれている。今日のところは景気のいい話として聞いて欲しい。

06-air-launch.jpg
おちゃめな検討例ですが、もしイプシロンをエアロンチしたらどうなるかという検討例。
上空で打ち上げるから高度を稼げる。 
もう一つ大きな魅力は飛行機で好きなところに持って行って打てる
太陽同期起動、地球を南北に回る起動ではロケットは南に打ちたいけど、内之浦は真南に種子島があって打てない。
種子島でも色々な障害があって南に打てない。
内之浦でも種子島でも南に打ちたいときは、わざわざ南東に打ってあらためて南に向きを変えている
この迂回のエネルギーロスはものすごい大きい。
エアローンチで太平洋の開けたところで打てれば、えいやで計算した表
地上からだと約800kg程度なのが、南に開けたところだと打ち上げ能力がこんなに増える(1410kg)。
ただ、この値は真南にうつという効果と、エアロンチの効果が合わさっている
地上からだけじゃなく、飛行機から打つというのを打ち上げ方式の多様化の研究といっている。

日本列島の絵が途中で切れてて不適切なのだが、北海道の大樹町あたりに打ち上げ基地を作ると南に障害物が全然無い
エアロンチじゃないのでこの表ほどにはならないが、大きな打ち上げ能力の改善が見込める


07-rocket-feauture.jpg
日本の、世界も同じですけど、ロケットは大きな転換点
これからはロケットの性能を上げるだけでは駄目で、製造から打ち上げ搭載系に至るまでロケットにかかわるライフサイクル全てのものをコンパクト、シンプル、低コストのコンセプトが大事なんです。
このために、イプシロンはロケットの知能化でモバイル管制を実現しようとして第二段階でロケットの知能を高くして、打ち上げ射場全体をTVの中継車くらい簡単に

こうなるとどこからでも打ち上げられる仕組みができあがって、未来のロケットの準備が整う。

JAXAでは小さいですが、観測ロケットを再使用化や再使用ロケットの着陸Phaseの実験を繰り返している。
カムイを含めて、全国の大学やいろんな研究所でロケットの未来化の研究がすすめられてている

JAXAの若手では、固体ロケットをもっと小型化して、もっと機動力を上げて、色んな実験のテストベットとして使おうとしている。

将来の再使用型ロケットにつなげていこうという実証的なアプローチ
50年先のロケットの姿を考えることがものすごく重要
あまりにそればかり考えたゆえに、スペースシャトルから進歩がなかった
将来のロケットがどんな形態になろうと、共通で必要なこと。
イプシロンのモバイル管制など一歩一歩着実に、ボトムアップ方式で未来を築いていく。

08-after50year.jpg

これまでの日本の宇宙開発の50年、ペンシルからはやぶさまで劇的な成功。
これからは宇宙開発の主役の転換
リスクの高い研究を民間とJAXAでタッグを組んで次のステップへ。
宇宙輸送方式に対する考え方の転換が重要
地上の建設方式に学ぶ
宇宙輸送も小さなロケットを高頻度に小口輸送して宇宙空間で組み立てるという考え方が重要と考えている
そうするとコストが下がって、リスクも分散する
将来の再使用ロケットがぴったりだが、イプシロンの枠組みの中でも共通項の研究を進めている

これまでの日本の宇宙開発はペンシルから始まり、これからの50年はイプシロンから始めたい

09-epsilon-schedule.jpg

最後のスライド、近未来に戻ってきた絵
いよいよ今年の夏イプシロン1号機が打ち上げる
2号機は少し間をとって、2015年に打ち上げ予定
なぜ間があくかというと、E-1開発の一部を前倒しして低コスト化技術の早期の部分実証を図ろうとしている。
E-1開発に向けて弾みをつけようとしている
よって2号機以降の能力は増える
太陽同期軌道の能力は1号機は450kg。2号機は550kg。100kg増える。
3号機は調整中だが、ASNARO-2を上げようと衛星グループと調整中
4号機は全くの未定。宇宙研から小型科学衛星3号機として募集が始まった。
このあたりが高性能低コスト版の初号機になるかも
4号機以降は例が2つしかないけど、候補は20個くらいある。
これ以降は安くなったEで小型衛星を打ち上げていきたい

以上


ということで感想ですが、ケース2のE-1までいければM-V級の打ち上げ能力が価格激安になるとか、wktkですな。
あと、エアローンチはイプシロンはいいね。これほどの重さのロケットを打ち上げる航空機は747改造でもいけるだろうけど、その飛行機の維持費があるからコスト的には大丈夫なんだろうかと思わなくはないかな 
まあまずは、1号機の打ち上げが成功することを願って。

(追記 2013/8/27)
発射中止になってしまいましたね。
大臣(内閣府特命担当大臣)まででてあやまらなければならないとは、ロケット打ち上げは政治的にも色々大変だなあ。(まあ成功しても大臣が出てくる予定だっただろうけど)
たかだか開発費数百億円なのに、道路とか橋とかホニャララITシステムに比べたら数百億円なんてゴミみたいな案件だよな。。。

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